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生前贈与について ーその1ー                    ~贈与についての基本~

知っておきたい贈与の基本

自分の財産を配偶者やお子様、お孫様に残しておきたいと思うが、自分が亡くなってしまうまでにある程度の財産を移しておきたいと思われる方も多くみえます。
そこで、生前贈与について検討する際に、気を付けておきたい基本的なことについて説明してみたいと思います。


贈与契約とは

「贈与」というとすぐさま「税金」と連想する方も多いと思います。

ところが、「贈与」は民法上の契約を前提として成立するものです。
そこで民法上の贈与契約について考えてみる必要があると思います。


「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずる」(民法549条)とされています。

あげる人(贈与者)が「あげるよ」と言い、もらう人(受贈者)が「もらいます」と言うだけで成立します。贈与契約は、諾成契約といって、口約束のみで特に決められた形式等がなくても契約は成立するとされています。

もちろん、口約束で成立するからといっても、それだけでは契約の成否についての立証は困難ですので、やはり贈与に関しても当事者同士で契約書を取り交わしておくことは重要と思います。

なぜ贈与に税金が課されるのか

贈与税は、もともと生前贈与によって相続税の負担を回避することを防止するために採用されたという沿革があります。
この意味で、贈与税は相続税の補完税としての性質を有しているといわれます。

贈与税の税率は相続税のそれよりも高い設定になっていますが、これも相続税回避のための生前贈与をなるべくさせないようにするためであるといわれています。

贈与税を調べようと法律上の条文を探しても「贈与税法」というのはありません。
贈与税については、相続税法に規定されています。

このことからも、贈与税は、相続税と密接に関連した税目であるということが分かります。

時代によって税制は変化していますが贈与も同じです

ところで、平成27年以降より、父母や祖父母の直系尊属からの贈与については、通常の税率(一般税率)ではなく、これよりも有利な「特例税率」が適用されます。

これは、資産家や富裕層の生前贈与を刺激して経済の活性化を図るという意図で設けられたものです。

このように、相続税回避のための生前贈与を抑えるという考え方で設けられている贈与税であるのに、
一方で、生前贈与による世代間の財産移転を促すために有利な税率を適用させるという、矛盾ともいえる考え方が並立しています。

つまり、その時の時代背景や経済状況等により国の政策が時代によって変化しているわけです。

生前贈与の方法にはその贈与の目的や当事者の状況によって選択可能な方法が複数あります

上記のほかにも婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用財産について2000万円を限度とした贈与非課税の制度は、配偶者の死後の生活基盤を保障する目的があるものと理解できます。

また、父母、祖父母からの居住用財産の取得資金について一定の金額を限度として非課税とする措置などについても、若い世代が住宅を取得することを促進させることを目的としたものです。

その時代ごとに合わせて、特例や新しい制度が創設されているのですが、このように、生前贈与については、財産を次世代に引き継ぐために活用できる選択肢があるのです。

平成15年度税制改正では、相続時精算課税制度が創設されており、また、教育資金贈与の非課税制度、結婚・子育て資金の一括贈与非課税の制度の創設などもあります。
これらは、以後追って機会あるごとに紹介させていただくことになるかと思います。

いわゆる「3年縛り」には留意を

配偶者や子供に贈与を行っても、贈与があったとされる日が相続開始前の3年以内である場合には相続財産に算入しなくてはならないので、注意が必要です。

いわゆる「3年縛り」と呼ばれるものですが、この趣旨は、贈与税が相続税の補完税であるので、できるだけ贈与税と相続税とで税負担が等しくなるようにすべきとの考え方から、本来は、一生涯を通じた贈与財産についてすべて累積的に相続税を課すべきであるところ、税務執行上の可能性を考慮して相続開始前3年以内の贈与については相続税を課することとしたといわれています。

相続開始前3年以内に贈与を受け相続税の申告を行い納税した場合には、相続税の計算において、その受贈財産は相続財産に算入され相続税が計算されますが、すでに納税した贈与税については、計算された相続税から控除されます。

なお、この「3年縛り」は相続人および受遺者(遺言等で財産をもらう人)について適用されるもので、相続税の納税者とならない者(たとえば受遺者となっていない孫)には適用はありません。ですので、上記の事例のように孫の甲、乙については、遺贈される場合(つまり受遺者)でなければ適用はされません。

受贈者が未成年者の場合でも贈与は可能なのか

契約書を取り交わしたうえで、贈与の契約をすることとなった場合、もしも受贈者がたとえば小学生であるような未成年者の場合には、贈与契約が有効に成立するのかという疑問がある方もおられると思います。

受贈者が未成年者の場合、かりに受贈者が乳幼児であっても親権者の合意があれば贈与契約(つまり受贈者の父母)は成立します。

この場合、受贈者の未成年者はまだ判断力もないため、受贈された財産の管理は親権者が行うことになります。

注意すべきなのは、親子であってもこの受贈財産については自由に使うことはできないことに留意が必要です。
もし親の都合で使ってしまった場合には、あらためて贈与の問題が生じたり、ましてや横領となってしまう可能性もあります。

預かった財産については、受贈者が成年に達する等、自立して行動ができるようになった頃にその財産を本人に渡すことにすればよいかと思われます。 

ちなみに、未成年者への贈与の場合、契約書は次のような書き方でよいかと思います。


                     贈与契約書

 贈与者 〇〇△男(以下「甲」という)および、受贈者 〇〇●介(以下「乙」という)は、本日以下のとおり贈与契約を締結した。

第1条 甲は、金××××円也 を乙に無償で与える意思を表示し、乙の法定代理人
   (父) ○○■朗 および(母) ○○▼美 はこれを受託した。

第2条  前条の金員については、令和〇年〇月〇日までに乙の下記口座に振り込むものとする。
      <振込口座>  ○○銀行 ○○支店 
       普通預金 口座番号 ××× 口座名義人  ○○●介

 上記のとおり契約が成立したので、これを種ずるため、本契約書を2通作成し甲乙各1を
保有する。

  令和〇年〇月〇日

       贈与者(甲) 住所:▼▼市▼区○○町〇丁目〇番地
              氏名: 〇〇△男     印
  
       受贈者(乙) 住所:▼▼市▼区○○町〇丁目〇番地
              氏名:○○●介       印

       乙が未成年につき乙の法定代理人(父)
              住所:▼▼市▼区○○町〇丁目〇番地
              氏名:○○■朗       印 
       乙の法定代理人(母)
              住所:▼▼市▼区○○町〇丁目〇番地
              氏名:○○▼美       印

※契約者そのものは記名押印で有効ですが、当事者の意思表示を確実ものにするため、署名押印が望ましいと思います。
※また、法定代理人の記名(署名)押印は、父母いずれか一方のみでも有効と思います

生前贈与についてーその1- まとめ

・贈与税は相続税の補完税であり、相続税負担を回避するための生前贈与を抑制する趣旨である。
・経済の活性化や消費促進など時代の要請にを背景にして、軽減税率や特例が設けられることがある。
・相続前3年以内の贈与(いわゆる3年縛り)に該当してしまい、相続財産に算入されることもあり得るので留意が必要。
・未成年者への贈与も可能。なお、契約書等の手続きの整備はもちろん必要。

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